THE WORLDへ挑んだ、U-22チャンピオンたち。

[2017 ソフトダーツ U-22 トーナメント] SOFT DARTS WORLD CHAMPIONSHIP THE WORLD 2017 STAGE 5 MALAYSIA

2017 ソフトダーツ U-22 トーナメントの優勝特典のひとつであるTHE WORLD参戦サポートを手にした、シングルス・ダブルス・女子シングルスの、4人の若きチャンピオンたち。10月22日、彼ら4人はTHE WORLD 2017 STAGE 5 MALAYSIAに参戦した。大会終了後、ダーツ界の「これから」を担っていく未来のトッププレイヤーたちに大会参戦の感想と今後の展望について聞いた。

シングルス優勝:古﨑彪星選手 (18)

若きダーツプレイヤーはダーツの「師匠」を見つけ指導を仰ぐ人も多いなか、独学でダーツに打ち込みU-22チャンピオンとなった古﨑選手。幼少期から遊びのうちにダーツに触れ、「ノリと勢い」をモットーに世界に挑戦した、若き超新星にTHE WORLD出場後の感想を聞いた。

[2017 ソフトダーツ U-22 トーナメント] SOFT DARTS WORLD CHAMPIONSHIP THE WORLD 2017 STAGE 5 MALAYSIA

師匠がいないから、たったひとりで「自分と戦う」

率直な感想を言うと、負けて悔しいです。地面を這いつくばったり、泣きわめきたいほどに。でも、これが現実です。上手い人はみんな練習しているし、それなりの経験も積んでる。僕には師匠がいないから、だからこそ、自分と戦わなければならない部分(特にメンタル面)が多くあるんです。THE WORLDは2回目の出場(THE WORLD 2017 STAGE 4(日本)に初出場)でしたが、前回とは雰囲気がまるで違ったため正直緊張しました。

単純に「ダーツをしよう」と思った

会場内で見たポール・リム選手のダーツが、その強靭なハートがうらやましかったです。彼のダーツは「上手い」だけでなく「強い」。ダーツが上手い人は星の数ほどいるけど、いかなる環境でもブレないメンタル面が持つ「強さ」を兼ね揃えた人は、そういないと思うんです。僕は今高校生で学校もありますが、環境はペナルティではないと思っています。自分の今の環境でどう時間をつくって練習するかを常に考えているし、練習中は少ない時間で一本一本意識して投げることを心掛けています。6年間ダーツをやってきて何年も悩んでいたことですが、「上手い」と「強い」が比例していればいいけど、メンタルコントロールがなかなか難しい。だからこそ、単純に「ダーツをしよう」と思ったんです。予選ラウンドロビン、「勝ち」が条件の対戦相手はJAPANプロの風間佑太選手。彼に勝てたのも「自分のダーツをする」というよりも単純に「ダーツをしよう」と思えたのが勝因だと思ってます。

応援してくれている人がいるからこそ、今の自分がいる

自分がダーツをやれているのは、もちろん支えてくれてる周りの人や励ましてくれる友達、尊敬できる同志があってこそだと思いますが、いちばんは親のおかげかな、と。実際にTHE WORLDでは、ダーツを投げられることの幸せを噛み締めながら投げていました。ダーツを本格的に始めた13歳の頃から、プロになってJAPANに出場するというのが夢としてあります。しかし、今回のTHE WORLDでは決勝トーナメントに進出したものの一回戦敗退という、周りの期待に応えられない結果となりました。JAPANにも出ていないし、THE WORLDでも何もできずに終わってる。今の自分は何者でもない。だからこそ来年はJAPANライセンスを取り、THE WORLDもできる限り参戦して、もちろん、あと4回出場できるU-22トーナメントでも全部優勝して、ひと回りもふた回りも大きくなって、いつか今日の自分を越えたいです。負けも一つの経験として、もっと強い選手になっていつかTHE WORLDの舞台に帰ってきます。

女子シングルス優勝:坂口優希恵選手 (22)

2015年から始まった「U-22女子シングルス」。その初代女王である坂口選手は、彼女にとってU-22ラストイヤーとなる今年、再び女王の座に返り咲いた。トーナメントとともに成長していったU-22を代表する女性プレイヤーが果敢に挑んだ、THE WORLD。出場を終えて、彼女は何を思ったのか。

[2017 ソフトダーツ U-22 トーナメント] SOFT DARTS WORLD CHAMPIONSHIP THE WORLD 2017 STAGE 5 MALAYSIA

ダーツって、言葉はわからなくてもコミュニケーションできるから素敵

ダーツには国境がないんだなぁと、実感した2日間でした。英語は上手く喋れないけれど、ダーツには(スポーツ全般に言えることだと思うけど)ルールがあります。そのルールにのっとって試合をして、みんなで一喜一憂する。いいプレーしたら讃え合うし、惜しかったら励まし合う。そんな当たり前のことが素敵だなぁと改めて実感しました。予選のラウンドロビンではスコット・カーシュナー選手と同じブロックだったのですが彼はとても優しく、私が5カウント出した時は試合中にもかかわらずすごく褒めてくれました。「ユキエ、ナイスだね!」って。これがTHE WORLDか~って感じでしたね。

「何もできなかった」という言葉に尽きる

U-22女子シングルスの代表として、チャレンジャー側の意識をもって挑戦したTHE WORLDでしたが、実際は「何もできなかった」という言葉に尽きます。せっかく優勝してマレーシアにきたのに、ちゃんと自分のダーツができなかったから、すごく悔しいしもったいない。運も実力のうちとは言いますが、経験値こそ実力に直結するのかな、と。私は一昨年U-22女子シングルスで優勝した際に出場したTHE WORLD 2015 STAGE 7(台北)、今年「日本ダーツ祭り2017」の初日に出場したTHE WORLD 2017 STAGE 4(日本)に続き、3度目の出場となりましたが、今回のTHE WORLDでも言葉にできないけど、何か新しい感情や感覚を得られたことが最大の喜びです。練習している日も、JAPANに参戦する日も、いつも何か持って帰れているのですが、今回みたいな言葉にできない何かは初めて。これはなんだろうって、考えることも練習です。結果はロビン落ちでしたが、とてもいい経験になったと思います。

女子ユースダーツ界の女王から、女子ダーツ界の女王になりたい

「鈴木未来選手を超える選手になりたい」。今はこの一心で、日々ダーツを投げています。私にとって今年が最後のU-22トーナメントでした。2015年の女子シングルスで優勝したけど、昨年(2016年大会)は途中で負けちゃって。今年は王座奪還をテーマに掲げて臨んだ大会だったし、今年の女子シングルスはラウンドロビンからだったから、優勝したんだという実感が大きくてすごく嬉しかった。メインステージに上ってダーツをすることって一種のステータスだし、自分で一からで上り詰めたステージは涙が出るくらいうれしいもの。ただ、一回登ったら絶対に勝ちたいから、食い下がりませんでした。そんな、私の人生の道標だったU-22トーナメントに来年は出れないと思うと、JAPANがあるはずなのに、ぽっかり穴があいてしまったな~という印象を受けていました。でもそれは今日までの話。あくまで私の目標は、鈴木未来選手のいる「あのポジション」に立つこと。未来選手も自分と同じ人間なんだから、JAPAN LADIESのTOPに自分がなれないはずはない。だからこれからは、U-22トーナメントにもらったたくさんの感情と経験を存分に活かしつつ、自分らしくマイペースに、目標に向かって突き進みます!

ダブルス優勝:香港代表 サン・ウェイ・ティン選手 (22)/シン・ホ・ナン・スカイ選手 (17)

昨年の女子シングルスで優勝し女子ダーツ界にその名轟かせた若き女王、サン・ウェイ・ティン選手(以下、サン)。彗星のごとく現れた香港の若き貴公子、シン・ホ・ナン・スカイ選手(シン・ホ)。互いを鼓舞し幾多の苦難を乗り越えてきたU-22最強ペアは、THE WORLDを終えたいま、どんな心境なのか。

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2度目のTHE WORLD参戦。やはり、世界のレベルは高かった

サン:初めて出場したTHE WORLD 2017 STAGE 4(日本)よりは緊張しませんでした。前回は初めてのTHE WORLDということはもちろん、翌日にU-22の決勝ステージが控えていたので、とても興奮していた記憶があります。その点今回は2回目だし、THE WORLDに対して真摯に、かつ冷静な気持ちで臨めたからとても楽しかったです。結果的に、世界レベルの高さをみせつけられ負けてしまったけど、THE WORLDは世界各国のプレイヤーが一堂に会す夢のような舞台でした。とても雰囲気が良いけれど、やっぱり実際に会場に足を運ぶと緊張しますね(笑)。

目標にしているTHE WORLD出場選手は

[2017 ソフトダーツ U-22 トーナメント] SOFT DARTS WORLD CHAMPIONSHIP THE WORLD 2017 STAGE 5 MALAYSIA

シン・ホ:やはり、僕の尊敬する(師匠のような存在である)ロイデン・ラム選手です。彼の勝ち進んでいくところが見たいし、彼の教えである「いつもありのままの自分で投げなさい」という言葉を大事にしています。U-22トーナメントのダブルスで優勝した時も、THE WORLDに出場した時も、もちろん普段の練習の時も、試合中は無駄なことはあまり考えないようにしています。特に「いいプレイをしなければ!」と思ったことはありません。そのおかげで、僕は今回のTHE WORLDもいつもどおりに投げることができました。

サン:今年度のTHE WORLDで、STAGE1から4までTOP LADIES AWARDを独占してきた女王・鈴木未来選手に注目しています。同じレディースプレイヤーとして、やはり彼女のことがとても気になっています。

U-22は「何度も出場したい」大切なトーナメント

サン:今年は私にとって、U-22としてのラストイヤーでした。来年からはU-22トーナメントには出場できないけど、もし生まれ変わったとしてもU-22トーナメントに出場したいと思っています!

シン・ホ:来年もU-22トーナメントに出場して優勝を勝ち取って、今回のように遠方で開催されるTHE WORLDのステージに参加したいです!日本の古﨑彪星選手は良き友達であると同時に良きライバルだし、普段もあまり年齢の近いプレイヤーと対戦する機会が少ないので、U-22に向けて同世代のダーツプレイヤーに負けないよう日々精進します。THEWORLDは、まだ学生なのであまり遠くのステージには出場できませんが、次回の香港ステージには必ず出場します!


特筆すべきは、U-22チャンピオンたちの顔つきの変化。THE WORLD出場前と大会終了後で、こんなにも引き締まるものなのかと感心した。U-22トーナメント優勝特典である「THE WORLD参戦サポート」を通して世界レベルを全身で感じたこの経験が、彼らのこれからのダーツ人生にどんな影響を与えるのか楽しみだ。U-22チャンピオンたちの今後のさらなる活躍に注目したい。

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