-STORY
それまで楽しそうに雑談していたが、インタビューでカメラを回した瞬間、粕谷晋の口数が極端に減った。粕谷は、一言ひとこと、何かを確認するようにゆっくりしゃべる。
「夢・・・。ですかね。SUPER DARTSは。あれだけのトッププレイヤー同士が戦うトーナメントは、DVDでしか見たことがなかったです」
兼業アスリートとして
粕谷は、造船の溶接業とプロダーツプレイヤーという二足の草鞋を履いている。昼間に仕事をしている者にとって、プロプレイヤーとしてダーツを続けることは簡単なことではない。
「まぁ・・・辛いところはやっぱり・・・」と言った後、少し考える粕谷。
「大会だと二泊三日とかもあるんで、移動のためだけに昼の仕事を一日休まないといけない。『ダーツのために休みます』って正直言いづらかったこともあります」
しかしプロツアーJAPANで優勝した時、スポーツ新聞にその記事が載ってから状況が変わった。
「そのときの日刊スポーツを会社の人が読んでて、それからだんだん会社に理解してもらえるようになってきました。大会があると『あ、わかりました』って言ってもらえるんです。ありがたいです、はい」
仕事があれば安定した収入がある。安定した地盤があるからこそ、結果を恐れずにチャレンジできる、と粕谷は言う。
「メンタルは普通の人より強いのかなって」
粕谷の冷静な試合運びや安定した成績は、メンタルの強さの表れかもしれない。
楽しいから
練習時間など制限され、かなりのハンディが強いられるのが粕谷の現状だ。それでもダーツを続けているモチベーションを訊くと、拍子抜けするくらいシンプルな答えが返ってきた。
「ダーツ、やっぱり楽しいですよね」
それ以外、思いつかない。だからこそ、頑張りたいと粕谷は言う。
「SUPER DARTSで、世界のレベルがどの辺にあって、自分の力がどこまで通じるのかっていうのを試してみたい。働きながらダーツをやってる人に、兼業アスリートでも、ここまで出来るんだってことを知ってもらいたいですね」
狙うはエンジョイダーツで世界一。兼業アスリートの挑戦に注目だ。