-STORY
現在、日本ダーツ界において、鈴木猛大は最重要人物のひとりである。
その類まれなるダーツセンスで、急速に力をつけ、ダーツをはじめて約一年という短い期間で2009年に開催されたSUPER DARTSに出場。以来、人気実力ともに日本を代表するプレイヤーとして活躍している。
一度でいいから負けてみたい
鈴木のダーツ人生において、その2009年がターニングポイントだ。
「一度でいいから負けてみたい、なんて言ってましたね(笑)。2009年に初めて出たときは、『そんなこと言って大丈夫?』って言われて。そっから長いですね。もう怖くて言えないですよ、本当に」
星野との対戦で学んだこと
2009年に出場したSUPER DARTS。そこで鈴木の人生が大きく変わる事件が起こる。
「SUPER DARTSがなければ、今の自分は存在しないでしょう。あの年は本当に調子が良く、ラッキーの連続でした。店舗予選、地区予選、関東決勝を、ほとんど1レグも取られずに勝ち上がって行けて」
“ダーツをもっとメジャーに”という理想を掲げたスタープレイヤー星野光正にSUPER DARTSで敗戦したのはそんなときだった。
「あの時の悔しさが自分を変えました。負けたからこそ、それをバネにしてダーツに一層のめり込めたわけです。その結果、さまざまな会社からスポンサーの申し出があり、プロとして生きていけることにもなりました」
2009年以来も、鈴木はSUPER DARTSに出場し続けており、繰り返すようだが、現在は文句なしのトッププレイヤーである。しかし本人の胸中は複雑だ。
「技術は、たぶん、日本でトッププレイヤーといわれてる人たちの中で一番劣ってると思います」という謙虚な言葉とは裏腹に、かなりの負けず嫌いなのだろう。敗戦直後の鈴木の悔しがり方はすごい。
「本当にすごいんですよ、ドSだし、負けず嫌いなので、すぐイライラしちゃうんですよね」
敗戦したときは、現状を受け入れ冷静に立ち振る舞いたいと鈴木は言うが、抑えられない衝動に駆られるのは、勝負師の性だろう。
「試合では笑ってるからこそ、負けたあとは思いっきり声出して泣きたいくらい悔しいですね。やっぱり応援してくれた方々に、『みんなにありがとう!』って笑って言えないことが、一番悔しいと思います」
鈴木にとってのSUPER DARTSは、「ダーツをやる以上、絶対出なきゃいけない夢の舞台」だと言う。来たる3月26日、その夢に対して、鈴木猛大というプレイヤーはどう決着をつけるのだろうか?